厚生労働省から積極的な接種勧奨が差し控えられたため、ワクチンの接種をどうしようかと悩んでいらっしゃる方が多いと思います。
そのような方への子宮頚がん予防のためのアドバイスを申し上げます。
まずは、子宮頚がん予防ワクチンの副反応情報の整理をしておく必要があります。
きちんと自らで取材しない、ほかの報道を安易に真似た一部メディアが、その後の責任をとらずに垂れ流す報道情報により、皆さんだけでなく医療関係者をも惑わされ、
またも繰り返される情報の混乱をきたします。正しい情報を確認しましょう。
☆副反応について
子宮頚がん予防ワクチン(2価・4価)による副反応は、確かに残念ながら事実として生じています。
しかしながら、動画サイトで見て驚くような特に重篤な副反応の発生頻度は、今までの世界からの報告では約100万人に1人の頻度で起きるとされています。
日本では治験時期から公費負担されている今までで、約300万人以上865万回の接種がなされていて、そのうち106人の重篤な副反応発生が報告されています。
この中でさらに複合性局所疼痛症候群(CRPs)が疑われている症例を含んでいるのは5例です。
つまり、世界報告と同等頻度で起きていることになり、日本だけが特別に多く生じているわけではありません。
また複合性局所疼痛症候群(CRPs)を含む「慢性の疼痛」と表記されるこの重篤副反応と、それ以外の注射や採血で生じうる失神や迷走神経反射をも副反応報告として全部含めると、
約1万人に1人の頻度で報告となり、これも日本赤十字社で献血時に起きる頻度と同頻度の副反応です。
子宮頚がんワクチンによる効果の報道よりも、ワクチンの副反応がことさら意図的に思えるほど強調されている印象をもつ人が少なくないのはそういう報道姿勢のためと推察できます。
子宮頚がん予防ワクチンは、他のワクチンと比べ特別多い頻度で副反応報告があるわけではありません。
さらに厚生労働省でも日本産科婦人科学会でも「HPVワクチンの効果と安全性に関する調査委員会」が設置され、今後も副反応情報を集め分析され、
感情的でない責任ある報告がなされますので、その報告を待ちましょう。
☆繰り返しますが、子宮頚がん予防ワクチンは、そのワクチン成分にために副反応頻度が特に多いというわけではないという事実。
☆世界120カ国以上で(公的費用負担している国は30カ国以上)で使用されている、このワクチンの効果とその同等の副反応の頻度で接種を中止した国は、
現在もないという事実。厚生労働省より「接種中止勧告ではない」、という姿勢が示されたのはこのためです。
副反応で苦しんでおられる方がいらっしゃることは非常に残念で、1日も早い回復をお祈りいたしますが、子宮頚がん予防ワクチン接種が特に重篤な副反応を起こすと誤解されそうな、
一部メディアの姿勢には問題があると思います。予防ワクチンは全ての種類において、メリット・デメリットの論議はあり、古くは18世紀の天然痘予防のジェンナーの昔から、
今21世紀に至っても賛否両論あるのです。有効性を認識し、個々の状況をよく自身で考えて、そしてまた接種医ともよく相談して、どんなワクチン接種も決めていきましょう。
今後、責任ある部署からの報告を、わかりやすく情報整理し、皆様へ提供するお手伝いを さとうレディースクリニック はしていきます。
下記を参考にしてください
- これまでに既定通りにワクチン接種を問題なく3回終了された方は、特に心配することはありません。今後、ワクチンの効果が発揮されます。
- これまでに、1回または2回の接種を済ませ、今後のワクチン接種を継続しようと考えている方は、引き続き接種を行ってください。
その際には、接種医からワクチンの説明をきちんと受けてください。 - これまでに、1回または2回の接種を済ませたが、今後のワクチン接種をためらっている方は接種医に相談してください。
それでも不安な方は、ワクチンの積極的接種勧奨が再開してから、接種を行うことをお奨めします。
ワクチンの標準的な接種間隔は「6か月間に3回」ですが、接種間隔が延びても3回接種することによって、十分な効果があります。
1回または2回で中止してしまうと、十分な効果が得られない可能性があります。
例)1回または2回の接種後に妊娠した場合には、その後の接種は出産後に継続します。つまり、数か月後または1年以上の間隔になっても大丈夫です。 - 現時点でワクチン接種を行わないと決められた方は、ワクチンの積極的勧奨が再開してから、あらためて接種の是非を検討されることをお奨めします。
ワクチン接種により子宮頸がん全体の約70%の原因とされる2種類(16型・18型)のヒトパピローマウイルス(HPV)に予防効果があります。
それでも、おとなになったら(あるいは大人の女性は)、必ず子宮頸がん検診を受けてください。
ワクチン接種をしなかった方は、おとなになったら必ず子宮頸がん検診を受けてください。
また、ワクチン接種を途中で中止した方は、ワクチンの十分な効果が得られない可能性があります。
おとなになったら(あるいは大人の女性は)、必ず、子宮頚がん検診を受けてください。
- ワクチンは100%の有効性でないので、いずれにしても国・市町村の行政機関が皆さんの税金から予算を組んでいますから、
住民対象の子宮がん検診を受けてください。 - 20歳、25歳、30歳、35歳、40歳の女性には
子宮頸がん検診の無料クーポンが送られています。是非ご利用ください。
会社提供の福利厚生によるがん検診では、方法により不十分ながん検診となっている場合もあります、検診医へご相談ください。
ワクチン接種後に、万一、体の不調や心配があるときには、
医療機関または市区町村の予防接種担当課の窓口にご相談ください。
【参考資料】
・厚生労働省
・日本産科婦人科学会
・埼玉県産婦人科医会
・自治医科大学附属さいたま医療センター 産婦人科教授 今野良 先生
・相模野病院産婦人科腫瘍センター長/北里大学産婦人科客員教授 上坊敏子 先生